8月7日(水)雨のち晴れ
昨夜のうちに洗濯物を乾かそうと思っていたが、使用中のため、出発準備をしている間に、乾かすことにした。100 円で40分間利用できる。時間は十分ある。
今日は、どこまで行くか決めていない。とりあえずの目標は隣の町、高千穂町である。高千穂は夜神楽で有名な所で、花祭と関係があるのではと以前から興味を持っていた。私が九州を訪れるのは、高校時代JRの「青春18キップ」で長崎を訪れて以来である。めったに九州まで来ることもないだろうと、今回のコースに入れてもらった。
洗濯物も無事乾き、高森町を午前7時50分出発、R 325号で高千穂を目指す。雲行きが怪しい、市街地に近付いたところで、かっぱを着ることになる。たいていのライダーはかっぱが嫌いである。着るのが面倒くさいし、夏場はむれる。
嫌いだからと、着ないわけにもいかない。濡れて悲しい思いをするのは自分である。
かっぱには着るタイミングがある。いきなりどしゃ降りになることは少ない。パラパラと降り出して、段々雨足が早くなり、止むけはいの無いときである。この判断を誤ると、着た途端に雨が上がったり、反対にずぶ濡れになったりする。判断材料として、参考にするのが、進行方向の雲、対向車のボディーに着いている雨粒である。対向車線のライダーがかっぱを着ているときは、迷わず着た方がよい。判断力が問われる。
止むけはいが無いと判断した私たちは、モンキーを止め支度をする。前籠からかっぱを取り出し靴を片方ずつ脱ぎズボンを履く。ブーツカバーをつける。上着を着る。籠、タンクバックにザックカバーを被せる。無線も濡れないところに移動する。地図を見ることができない。やはり面倒くさかった。
高千穂町教育委員会に立ち寄り愛知県から神楽の里を尋ねてやって来たことを伝え、担当者に面会をお願いした。生憎文化財担当者は、留守であったが、歴史民族博物館に学芸員がいるので、そちらを尋ねてみてはと女性の職員が教えてくれた。
雨は、まだ降り続いている。かっぱを着込み博物館に移動した。
宮崎県内には暴風雨警報が発令されていた。ブーツカバーではしのげないと、長靴を買い込んだ。これに勝るレインブーツは無いだろう。
かっぱを脱ぎ受付けで、用意してきた豊根村の要覧と花祭の資料、名刺を差出し担当者の方に取り次いでもらう。来客中なので館内を見ているように勧められ、入館料の 200円を払うことなく、見て回った。神楽関係の展示物はわずかで、考古学関連の資料が多かった。 学芸員の方に神楽についての話を伺った。1つ尋ねれば、10くらい答えが帰ってきた。話すことがとても好きらしい。完全に彼のペースである。
話題を変えようと、椎葉村の話を聞くと物凄い所らしい。彼は、どれ程凄いかを、事細かに説明してくれた。是非行って見たくなり、タイミングを見計らい博物館を出た。
有名な高千穂峡に立ち寄りもせず、R 218号熊本県蘇陽町経由R 265号で椎葉村を目指す。途中国見峠には、8月2日開通の地図にも載っていない国見トンネルを通ることができた。峠越えより30分は時間の短縮ができるそうである。
予想に反し、容易に椎葉村の役場に到着した。高千穂のロスもあり、今回は教育委員会に寄るのはやめた。椎葉にも学芸員さんがいるらしく、今後の日程を考えると長居もできそうにない。
R 265、388 号を人吉市に向かう、想像を絶する国道であった。0.8 車線、急勾配、路肩は今にも崩れそうである。モンキーで来て良かった。
1時間以上対向車に会ってない。まだ、椎葉村から抜け出せない。どうやら九州の秘境に迷い込んだらしい。
峠を越えると長い下りが続いた。次第に道幅は広くなったものの、勾配が普通でない。11%の勾配と路肩に看板があった。椎葉村は、南からアタックした方が感動が大きいだろう。
湯前町からはR 219号、相良村からR 221号の人吉ループ橋を通りえびの市に入る。今夜はえびの高原でキャンプだ。
麓で燃料補給をし、スーパーで宮崎牛を買う。レジで高原までのルート情報を聞くと、先月の台風で、通行止めになっているらしい。色が変わるからと店員さんが氷を入れてくれ、オートバイなら通れるかもと教えてくれた。巷ではO 157で大騒ぎである。
一分の望みに賭け、えびの高原を目指した。途中、全面通行止め、迂回路の看板があった。スタンドで尋ねると、頼み方によっては、通してくれるらしい。もちろん我々は、そのまま進んだ。
バリケードには、厚化粧の中年女性ガードマンが立っていた。旗を横に降っている。近付き、通してくれないかと頼むが、駄目だと断られる。下の町で、オートバイは通れると聞いて来たのだがと言っても断られた。職務に忠実なのは、わかるが人情が無い。
融通の利かないババアを相手にしては、勝ち目は無い。モンキーで愛知県からやってきたと言っても凄さがわかって貰えるはずもない。あと10キロメートルで目的地だというのに。九州で一番気に食わないババアとして、いつまでも語り継ぎ、私の記憶から消えることは無いだろう。
標高が高く、霧雨が降り出した。またかっぱを着るはめになる。直進を諦め、小林市を通る迂回ルートを走ることにした。キャンプ場まで1時間もかかった。初めから迂回ルートを目指していれば、1時間半以上早く到着していただろう。たいていの人間は本当に通れないのか自分の目で確認するまでは、看板を無視して進むらしい。「急がば回れ」という諺は本当であった。
午後7時到着。雨のテント設営、撤収は更に時間がかかる。外は8月の九州とは思えない程寒い。今夜は一人 2,800円でケビンに泊まることにした。
缶ビールを自動販売機で調達した。両替をした売店のおじさんに通行止めの事を話すと、オートバイは、よく通してもらっているそうだ。益々腹が立ってきた。
キャンプ場内の温泉に入り、遅い夕食をとる。持参したフライパンで焼いた宮崎牛が美味しかった。
四畳の部屋と、4人分の2段ベッドは、2人の荷物で散らかり、自分の部屋のようである。
本日の走行距離 248.9km
昼食 コンビニ
夕食 宮崎牛 ビール